とある作曲家の日常

作曲家・ピアニストをしている私の日々の生活を綴ります♪

失敗は成功の母

 私はピアニストとしても活動しているが、幸い今まで演奏会の本番で止まってしまったりという失敗はしたことがない。ただ、中学生の時に一度だけ、本番ではなくリハーサルの際に、ある曲の前奏(5小節くらいの)で失敗し演奏が止まってしまったことがある。
 僕が通っていた男子校は中学高校一貫、学内で年に一度、クラス対抗の合唱コンクールがあった。5歳からピアノをやっていてた僕は当然というかいつのまにかこのイベントでは中心的人物にされ、ピアノを弾いたり、歌の各パートの練習などを面倒みたりしていた。そしてついには6年間ピアノ伴奏ばかり担当することになり、歌い手として歌うことなく卒業してしまった。
 クラスの皆は僕のことを音楽的に信頼していたし、一応「コンクール」なので賞が出るのだが、良い賞をもらうことも多かった。
 さて、「失敗」の話しは中学3年生にさかのぼる。その年の合唱コンクール、いよいよ中学では最高学年、指揮者の担当は小さいころから弦楽器の英才教育を受けてとても上手く音楽センスも抜群の同級生という、万全の布陣で望んだコンクールだった。
 リハーサルは本番直前に1回だけ、確か15分くらいで制限されていたように思う。最初の曲は6小節ほどピアノだけの前奏がある。勢いの良い曲だったので、僕は意気揚々と弾き始めたのである。
 ところが。やまり緊張していたのであろうか、いつもと違う椅子の高さだったからだろうか、あるいはリハーサルということで気を抜いていたのであろうか、右手にいきなり出てくるオクターブ奏を弾いている途中に急にどの音を弾いているかわからなくなり混乱してしまったのである・・!演奏は歌が始まる前にストップした・・
(こ、これは気まずい雰囲気になるぞ・・)
とびくびくしていた瞬間、クラスの全員が大爆笑したのだ。
「うわっ、あの○○が間違えた!」「ありえへん!」
「びっくりするわ~!!」「こんなこともあるんやな~」
などと口々に言っている。僕は顔を赤くしながら、
「すいません」とペコペコ頭を下げるアクションをしながら、
再び弾き始めた(今度は(ドキドキしたが)うまくいった)。
 この出来事で、逆に皆の雰囲気が和やかになり、リラックスしてくれたようである。間違いを馬鹿にせず豪快に笑ってくれた皆に感謝。
 そしてこの年、中学3年の我がクラスは見事最優秀賞を受賞することができたのである。


 「失敗は成功の母」というが、意外なる「失敗」が「成功」へと導いた一つのエピソードであった。