とある作曲家の日常

作曲家・ピアニストをしている私の日々の生活を綴ります♪

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

 少し前にこの曲は、浅田真央さんのフリーでの素晴らしい演技と共に話題となったが、僕はこの曲もう好き好き歴20年を超える。高校時代には楽譜を2つ(?)買い、むさぼるように弾き、いつかオーケストラを共演するぞ!などと身の丈にも合わないことを思っていたものだ(それが後に思わぬ形で実現するのだが)。
 冒頭の「鐘」8小節に渡る全音和音(親指から小指まで10度の開きがある上にその間にも音が存在する)の連続、自慢ではないが私は手が大きく指が長いので、両手全て同時に打鍵することができる。自慢ではないが(ひつこい!)はっきり言うと弾いていて心地がよい。同時に鳴るということは、和音の立ち上がりと響きが凛とし、かつカツ重のように重厚な全音符が、遠くから聞こえてくる鐘のように鳴り響いて近づいてくるのである。前代未聞な前奏である。
 その有名な前奏が終わると、ピアノパートは一旦伴奏役割に回る。まあ11連符やら13連符やら7連符やら、割り切れない分散和音が、弦のメロディが素晴らしすぎるので、何連符になろうがほぼバレない(本当に!?)。そして弦のメロディを引き継いだりして展開していく素晴らしい極上の音楽にうっとりしながら、でもうっとりはミスを引き起こすので適度にしなければならない。
 幸運だったのは、あるアマチュアオーケストラの定期演奏会でこの第2番が取り上げられた際、そのオーケストラと繋がりがあったため練習ピアニストとして使ってもらえたりもした(オケとの共演の夢が叶った!)。
 さて第1楽章の魅力だけでも本一冊が書ける勢いなので(笑)、第2楽章以降はまた別の機会に・・。
 さて、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番も有名だが、実は隠れた名曲は第4番だと個人的に思っている。この第4番は、CDも少なく演奏会ではめったに取り上げられない。理由は明白で、出だしのアイデアが失敗しているのである。最初の2小節のワクワクさせるcrescだけは良かったが、その後はまた例の四分音符が続くラフマニ節全開の甘いメロディを、少々甘さが足りない退屈な和音で持ってきてしまった。しかし、そこを我慢(?)すれば、其の後は素晴らしい世界が待っている。特に第2楽章などは天国にいるかと思うような美しさの音楽だ。さらに第3楽章に入ると、これぞヴィルトゥオーゾという指さばきを見せ、快感に導いてくれる。クライマックスもしつこすぎず、ちょうどよい塩梅でこの曲を締めくくる。まさに拍手喝采である。
 しかし、である。第1番もこれまた、捨てがたいのだ。ラフマニノフがまだ学生時代に書かれたこの作品、曲の冒頭に見せるこの上ないロマンチックで切ないメロディは、チャイコフスキーなどロシア音楽の流れを強く汲みつつも、ラフマニノフにしか出せない特有の「濃さ」を展開する。もうこのメロディ好きすぎて12小節で気絶しそうになる。

 要するに、私はラフマニノフ大好きなのである(え、もう充分だって!?)。