とある作曲家の日常

作曲家・ピアニストをしている私の日々の生活を綴ります♪

忘れられない一言

 何気なく言われた一言が、一生心に残るって、ありますよね。
 大学で所属していた合唱サークルでは、毎年夏合宿というイベントがあり、当時は山のある県に団体バスで遠征して、5泊か6泊くらいとかしていたと思います。その年私は大学3回生(3年生)で、学生指揮者をしていた時の合宿でした。そもそも私は人前に出ること、人前でしゃべること、人前で腕をぶんぶん振ること(笑)、どれも苦手で恥ずかしく、じゃあなぜ指揮者やったんだっていう話しは置いておいて笑、毎日が自分との戦いという感じでした。
 合わせ練習の時間って、指揮者として前に立っていると、皆が楽しそうに歌っているか、そうでないか、それはもう残酷なほどに明白にわかるものです。もし皆がつまらなさそうにみえると、それを取り戻そうと自分のテンションを上げたり面白いことを言って場を和ませようとしたりしてもそれが逆効果だったり。悪循環のスパイラル・・。それと、合宿ではまず年末に行う演奏会の曲の音を取る(音程を確認していく)作業から始まりますから、そもそも音楽にならないことが多いのです(皆楽譜にかぶりつきで指揮をほとんど見てくれないし・・)。そんなこともあって毎日精神的にも体力的にも疲労困憊の日々でした。
 そんなある日、4日目くらいだったか、その日の練習が終わった夜、ベランダでたばこを吸っていたら、あ、違う、なんかイメージだけで語ってしまった(笑)、ベランダで落ち込み気味に物思いにふけっていたら、普段はほとんどおしゃべりしない、本人も寡黙な同回生の女声の子がふと横に来てくれて、ぽつっと「わたし、○○くんの指揮、好きだよ」と、目を見て言ってくれたのです。そんなこと言われたことなかったし、落ち込んでいたから、意外な一言に動揺すら間に合わなくて、引きつった顔で「ありがとう」というのが精一杯・・。でもその子の一言が、合宿の残りの日や、その後の指揮者生活を支えてくれたのは間違いないです。
 どこかに見ていてくれる人がいる、応援し支えてくれる人がいる。こんな幸せなことはないんだな、って、最近になってやっと冷静に深く(この感覚わかりますか?)感謝できるようになりました。
 あれからもう20年弱。同期たちもお互い住む場所も遠くなったりでなかなか会う機会が少なくなってしまってますが、今度もしその子に会う機会があったら、今度は引きつらないで素直にその時のことを「ありがとう」って伝えたいと思います。